自宅が台風などで被害を受けた時、もらい事故のようなものでも自らの火災保険で対応しないといけない、もしくは、対応したほうがすぐに修繕作業を行うことができます。
そうした実際にあった事例を紹介します。
2018年9月に関西に上陸した台風21号、記憶に新しい方も多いのではないかと思いますが、関西地方に住んでいる筆者も被災した一人です。とにかくものすごい台風でした。この経験で台風に対する考えが一変したのですが、火災保険に対する見方も同じように大きく変わりました。建築関係の仕事をしているので、台風のあと数カ月は屋根や外壁、アンテナの修理などの依頼で、仕事に追い回され、細かい残務も含めて台風21号関連の仕事がほぼ完了したのは翌年、2019年の12月ころでした。
多くの修繕の仕事は各家庭や会社で加入されている火災保険で費用を全額もしくは大部分を補うことができたので、経済的な負担は少なく済んだという方が多かったのですが、火災保険に加入していなくて全額自己負担という方も少なからずおられました。また、加入していても風災補償をつけていないので保険金を請求できなかったというケースもあったので、火災保険の契約内容もしっかり確認することが大事だとも思いました。
近年、自然災害により大きな被害が出ることが増えてきているので、“火災保険が大事だな”としみじみ思った現場をいくつか紹介させていただきます。
特に保険の代理店をしているわけでもないのですが、仕事柄、家を購入する方から相談を受けることが多く、以下のケースのようなことも起こりうるので、
「保険についてはよく検討される方がよいですよ」
とご説明しています。
万が一の事態に備えて火災保険を考える際の参考になれば幸いです。
ケース① 台風で飛んできた鉄製の屋根が自宅の玄関にあたり破損した
2018年の台風21号の際の話です。
近所にあった大きな施設の鉄製の屋根が、台風で飛ばされ、道路を挟んだ向かい側の家の門扉と玄関を破壊してしまいました。台風の勢いが少し収まってから、その施設の責任者が蒼ざめた顔でやってきて、たいしたお詫びもなく、
「今回の破損事故は台風の影響による自然災害のものだから、お宅で加入されている保険で対応してください」といった旨の説明だけして、さっさと帰っていったそうです。
当然、家の持ち主は、激怒されたそうですが、“弁償する、しない”については、互いに合意にいたらなければ、最終的には訴訟などを起こすしかありません。そうなれば、費用と時間がかかってしまいますし、とくに玄関扉が壊れた状態を放置しておくことはにちにちの生活に大きな支障をきたします。
その損害については、その家に加入していた火災保険が風災補償にも対応していたことから、100万円以上かかった修繕費用がほとんど保険金で補償されたそうですが、補償がなければ、費用負担も含め面倒なことになっていたと思います。
こうしたもらい事故みたいなことも台風などでは起こってしまいますので、しっかりと家の保険の補償範囲がどうなっているかは、確認しておきたいところです。
ケース② 台風で倒れたアンテナが隣の家の太陽光発電を壊した
台風でアンテナが倒れた時に屋根を破損するというのもよくあるケースのひとつです。
アンテナが自宅の屋根瓦に直撃して、かわらが数枚、破損しただけという場合、修理費用も大して金額にはならないし、自分だけで修理をすればよいだけの話ですが、
たまに起こる厄介なケースとしては、倒れたアンテナが
隣の家に倒れこんで隣の屋根を壊した。
隣の家のベランダに倒れこんで隣の家のエアコンの室外機をへこませた。
みたいなケースで、自宅の修繕だけで済まないケースです。こうした場合、隣家の方にお詫びに行ったり、修理をどうするかなど、手続きなどがとても面倒になることがあります。
そうしたケースの中で、「修繕金額が大きくなるので大変だな」と思った現場が、倒れたアンテナが隣の家のソーラーパネルをへこませてしまった現場でした。
こちらも2018年の台風21号のケースです。台風で倒れたアンテナが隣の家のソーラーパネルにあたってしまい、ソーラーパネルを破損させてしまいました。ソーラーパネル自体が高額なため修理費用も壊れかたが悪いと作業費用を含めて、100万円を超えることもあり得ます。
このケースも被害に遭った側の家主さんが“どうしてくれるのか”みたいなことを言って、最初は揉めそうになったそうですが、火災保険で補償が効いたので、最終的にはそれ以上に問題は大きくならず、一件落着したそうです。
「お隣さんと仲が悪くなるといろいろ厄介なので、大きな問題にならずに済んでよかった」
と、アンテナを所有していた側の家主さんが仰っていました。
太陽光パネルは、工事の方法によって、火災保険の建物と家財のどちらの扱いになるか違ってくるようです。太陽光パネルをお持ちのご家庭は、どちらに該当して、どのくらいの金額が保証されるのか保険会社に確認しておくとよいと思います。
ケース③ 隣のマンションの足場に落雷して自宅の家電一式が壊れた
これは台風21号の話ではありませんが、雷が落ちた時にこんな被害も起こることがあります。
隣で2階建てのアパートで外壁塗装工事を行っており、足場を組んでいました。季節は、8月上旬の暑い盛りで、晴れの日でしたが夕方になって急に空が暗くなって、雷が鳴りだし、雨が降るかなと空を見ていたら、大きな音とともに隣の足場に雷が落ち、そのあと、自宅が停電したそうです。分電盤を見るとブレーカが落ちていて、もとに戻すと電気は戻ったそうですが、冷蔵庫、電子レンジ、テレビ、DVDレコーダが故障していました。
特にレコーダの故障は、激しいもので電源コンセントの接続部分が黒焦げになっていました。雷でアンテナやテレビがおかしくなったという現場はいくつも見てきましたが、こんなに多くの家電製品が激しく壊れている現場は初めてでとても驚きました。
このケースも、家電製品の買い替えと修理の費用で70万円近い損害金額だったのですが、火災保険の家財保険にも加入されていたのでそちらで補償されました。保険会社の担当者がすぐに来て現場を確認して、保険の手続きを取ってくれたそうです。
雷の落ちた日が土曜日で作業をしている人がいなかったので、人身事故が起こらなかったのが幸いでしたが、「隣に落ちた雷で自分の家に被害がでるとは思わなかった」とその家主さんが仰ってました。実際のところ、それだけ大きな雷なら自宅にも落ちていたかもしれませんし、隣の足場への落雷が直接的な原因かは、断定できないのですが、足場に落ちた雷が原因の可能性も否定できません。実際にどこに落雷したのかは定かでありませんが、それでも自宅に起こった被害は、その建物に加入している保険で対応する必要があります。
雷は広範囲に影響を及ぼすので、近所に大きな雷が落ちたら、自宅のパソコンの調子が悪くなった、Wifi機器やインターネットがつながらなくなったというのはよく聞く話です。雷が鳴りそうだったら、電子機器のコンセントを抜いたほうがいいというのは、よく言われていますよね。
もらい事故のようなものも自宅の火災保険で対応しないといけない
これらのように自らの責任によらない、もらい事故のようなものも自宅にかけている保険で対応しなければいけません。
また、隣家で発生した火災の延焼で自宅が被害に遭った場合、火災を出した家の持ち主が弁償するのではなく、自ら加入する保険で修繕などの対応をしないといけません。
台風や地震のによる被害も含めて、加入している保険の契約内容でどこまで補償されるかは変わってきますので、一度、加入している保険がどこまで補償されるものなのか、確認してみてはいかがでしょうか。